6月のスペインは気温が連日30℃超えの地域も多く、夏至を過ぎたばかりの現在は、日照時間が一年でもっとも長くなっています。私が住んでいる地域の日の入りは22:00過ぎで特に夜が明るく、完全に空が暗くなるのは23:00を過ぎた頃。というわけで、もうすっかり夏モードです。
それを感じる瞬間が、スーパーへ買い物に出かけた時にも。この時期になると、スペイン人がこよなく愛する夏のドリンク「オルチャタ」の存在感が増すのです。
日本では聞き慣れない名前のドリンク。私もスペインで暮らすまでその存在を知らなかったのですが、今ではスイカ、ピミエント・デ・パドロン、レモンビール、ティント・デ・ベラーノ(とサングリア)という私の夏の方程式に新たに加わりました。
オルチャタは「タイガーナッツ」を原料としたドリンクで、プラントベースミルクの一種。その名前から木の実かと思われがちですが、カヤツリグサと呼ばれる植物の塊茎(茎にできる塊)。野菜の仲間で根菜に分類されるそうです。
歴史は古く、スペインでは600年以上前から栽培されているというタイガーナッツ。特筆すべきは、栄養価の高さです。食物繊維はゴボウの14倍ほどで、ゴボウ1本分の食物繊維がタイガーナッツ約20粒に相当。また、ビタミンEも豊富。タイガーナッツにはアーモンドの約2.5倍もの量が含まれており、活性酸素の除去や血液の循環をスムーズにする効果が期待できます。その他にも、マグネシウムや鉄分、オレイン酸など健康に嬉しい成分がぎっしり。
そんな栄養価の高いタイガーナッツを水に浸し、撹拌、圧搾、ろ過したものが、バレンシアを代表する夏のドリンク「オルチャタ」なのです。
ナッツではないと言いましたが、味は香ばしくてナッツ感が強め。かと言って、豆乳やアーモンドミルク、オーツミルクとはまた違う風味。何とも独特な味わいです。
また、砂糖で甘く味付けしたものが主流で(タイガーナッツは栄養価が高いですが、一般的なオルチャタは砂糖たっぷり)、そこに「ファルトン」という菓子パンを浸しながら食べるのが人気。個人的には甘くない、もしくはほんのり甘いくらいがちょうど良いので、砂糖不使用のオルチャタを探していたら見つけました。
でも、不思議と無性に飲みたくなるんですよね、甘~いオルチャタ。日本で出会ったら敬遠していたでしょうが、ガツンとくる甘さにスペインの夏を感じて嬉しくなる自分がいます。