バスク地方の微発泡白ワイン「Txacoli」との出会い

よく、“人間にとって食は一番身近な幸福”なんて言いますが、その通りだと思うのです。

以前Weekly logで、コロナ禍でも旅の気分が味わえるように毎週異なる国や地域のチーズを愉しんでいると書きましたが、ここ1年の生活を振り返ってみると、チーズだけに限った話ではないな、と。無意識なようで意識的に、訪れたい国や地域のものに手を伸ばしていることに気付きました。

スペイン側のバスク地方のワイン「Txacoli(チャコリ)」との出会いもそんな流れでした。

いつものようにスーパーでデイリーワインを選んでいたところ、価格タグにバスク地方の州旗がついているのが目に留まり、どんなものなのかも調べる前にカゴに投入。理由は単純で、バスク地方はスペイン国内で一番訪れたい地域なのです。

スーパーから帰宅後にチャコリについて調べてみると、伝統的なチャコリは微発泡性で、アルコール度数が一般的なワインよりやや低め。香りは柑橘類、ハーブ、花の強いアロマを感じさせ、ごく辛口で酸味の強さが特徴とのこと。

スペイン語辞典では「バスク地方、カンタブリア地方、チリで作られる軽くてやや酸味のあるワイン」、バスク語辞典では「主にバスク地方の海岸で作られる軽くてやや酸味のあるワイン」と定義されているようです。しかし、実際には内陸部でも造られてれており、伝統的なチャコリの酸味がないものも存在するため、他のワインとは区別されているものの、どちらの定義も完全には当てはまらないのだとか。

そんなチャコリの最大の生産量を誇るのは、バスク地方の海岸沿いの町、ゲタリア・ザラウズ・アヤのワイナリー。ここで生産されたものはDO(原産地呼称)認定を受けており、「Getariako Txakolina」と書かれたラベルが貼られています。

私が初めて購入したのもゲタリア産の白・微発泡タイプ。

ゲタリア産の地理的エリアには約433ヘクタールのブドウ畑があり、畑のほとんどは棚田。その90%は沿岸部に位置しているそうです。

伝統的な微発泡性のチャコリは、「エスカンシア」といって高いところからグラスに注ぎ、泡立たせることで酸味がまるくなり、香りが開くと言われています。が、エスカンシアにはコツがあり、素人には少々ハード。

残念だけど普通に注ぐか…と諦めかけていましたが、私が今住んでいるアストゥリアスでは「シードラ」というリンゴ酒を注ぐ際に同じような作法を用いるため、素人向けにボトルの注ぎ口に取り付ける特製キャップが販売されているのです。

ちょうどこのキャップを手に入れたところだったので、チャコリでもいけるかも!と実践してみると、思った通り。グラスの中で炭酸が割れて綺麗な泡が広がり、新たな香りが顔を覗かせました。

味わいはスッキリ爽やかで、酸味の余韻が心地良い。普段は甘口ワインを好む私にはこれが新鮮で、昨年末は自分の中でチャコリブーム到来。バスク地方への旅の憧れが入口でしたが、その味わいに魅了されてしまいました。

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