昨年末、ソフィア王妃芸術センターを訪れた日のこと。

当たり前に外出できた日々を恋しく思う日々が続く今、”またいつか”と自分自身への励ましと希望を込めての最近よく過去の時間に浸っています。

遡ること昨年の11月、日曜日の昼下がりに訪れたのはソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía)。年末に掛けてマドリード市内は大混雑を迎えるので、出掛けるという行為が極端に億劫に感じてしまう・・・。その前にと、駆け込むように足を運んだのです。

ピカソ・ダリ・ミロの作品をはじめとする20世紀のモダンアートがコレクションの中心となっている同美術館。当時タイミングよく仏女優デルフィーヌ・セイリングに関連するフェミニズム展「Musas insumisas」が開催されていて、どうしてもこちらを鑑賞しておきたいという理由もありました。このエキシビジョンについてはこちら

週末の午後ということもあって若干混雑していましたが、それでも落ち着いてゆっくりと鑑賞できる程度。建物の構造は中央の大きな中庭をぐるりと囲むようにして展示室が続いています。

モデルコースを辿ればコンパクトに鑑賞が進められるのでしょうが、毎回気の向くまま好きなように。この日、真っ先に足を踏み入れた展示室で目に飛び込んできたのはダリの作品。シュルレアリスムを代表するアーティスト・ダリですが1924年にはこんな静物画も描いています。

こちらはその翌年に描かれた名画『窓辺の人物』。作品のモデルとなった女性はダリの妹アナ・マリア、既に質感や色感にダリの特徴を感じさせます。

ミロの部屋(確か展示室202)では、絵画作品の他にパリでピカソらと共に手掛けた紙媒体のイラストなども。

シュルレアリスム運動に参加したミロですが、展示室内のとりわけ20年代の作品にはシュルレアリスムの誕生と切り離すことのできない文学の存在が反映されています。

同じ展示室(確か)には、フランシス・ピカビアのイラストも。

こちらはスペインを代表する芸術家、ホアキン・ソローヤの作品。ダリの名画コレクションと同じ展示室だったような。

キャンバス上で光を巧みに操ることから「光の芸術家」と称されるソローヤ。彼の作品が好きな方は、マドリードにある彼の邸宅兼アトリエがそのまま使用されたソローヤ美術館を訪れるのを強くおすすめします。同所を訪れた時のことはこちら

続いてカタルーニャ出身の芸術家、アンヘレス・サントスの『世界』。作品から伝わるように、彼女もまたシュルレアリスムから強い影響を受けた一人。

そして、最後にソフィア王妃芸術センターの顔であるピカソの『ゲルニカ』ももちろん鑑賞。

圧倒的な存在感を放つこの作品の前にはいつも人集りができているのですが、人波の隙間から絵葉書を覗き込むようなことはせずとも、展示室に踏み入れた瞬間、巨大なキャンバスが視界に覆い被さってきます。

世に知られている通り、この作品はスペインのバスク州・ゲルニカが被った都市無差別爆撃が主題となったもの。今日では政治的な意味合い、暴力、民間人の脆弱性を語るエピソードの象徴的なアートとして登場しますが、同時に様々な解釈・議論がなされている作品でもあります。訪れる直前、ソフィア王妃芸術センターの公式サイトを覗くと「ゲルニカの再考」というプロジェクトで作品誕生から現在までの歴史や背景、関連する多くの資料や映像が公開されていたのですが(どうやら現在も)、そちらもかなり興味深かったです。

現在、同美術館は臨時休業中ですがオンライン運営によって公式サイトでは「Radio del Museo Reina Sofía」というラジオをはじめ、面白そうなプログラムが随時更新されています。次の訪問までしばらく、こうしたデジタルな楽しみ方を満喫予定です。

ソフィア王妃芸術センター公式サイト



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